お母さんもうけたね

「お母さんやったね!もうけたね!」と私が言ったのは、スーパーのレジで幾枚もの小銭を受け取った時だという話を、母親は親戚や親しい友人の集まる会でもう何度も話している。

私は子供の頃すごく素直に気持ちを表現する子で、外を走り回り、家の中では兄弟喧嘩をしょっちゅうしていたが、真っすぐな心を持っていたと両親は言う。
当時のやんちゃぶりからは想像できなかったみたいなのだが、少し大きめのスーパーで子供が腕で抱くくらいの小さなクマのぬいぐるみを「かわいい!」と言いながら離さなかった。
私はもうそのことを覚えていないのだが、おもちゃやゲーム機などほとんど与えていなかった両親も、そのぬいぐるみは買ってあげようと思ったらしい。
今でも実家の戸棚に置いてあり、目に入るといつもこのエピソードを思い出す。

それ以外には特に女の子が好みそうなものとか可愛いものだとかは欲しがらなかったから、この話が幼き日の可愛い思い出話として残っている。

少し大きくなってから好きになったものは小銭やコインで、当時よく見かけた公衆電話用の両替機を見つけては手持ちの200円を20枚の10円玉に交換し喜んでいた。
親に話すと「迷惑になるからやめなさい」と言われたが、私は度々両替し財布をパンパンにしていた。

その頃にはもちろん得しているわけではなく、両替しても価値は同じであることは知っていたが、お金の「数」が増えるということが単純に嬉しかった。
しかしあの日はまだ幼く、食料品の買い出しで母親が千円札か一万円札かを出し、その代わりに大量に硬貨が返ってきたことが嬉しかった私は、スーパーのレジで「もうけた!」と思ったのだ。

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